狼の花園〈完〉【修正版】

姫の居場所 /失意の中で



小菊の帰りを待つ間、
鈴蘭は花音を広間に運び、治療しやすいように ありったけの燭台を集めておいた。

竜胆は花音に付き添って広間に居て、
霞は少し休んでから、戦いによって散らかった花音の部屋を片付けた。

暫くして、小菊が山脇を連れて戻ってくる。

殿と、表にいる清白を除いた全員が、広間に集まった。

事情を聞いた山脇は、不機嫌な表情を浮かべていたが、それは決して、真夜中に叩き起こされたからではない。


「夜分遅くに呼ばれたからには、何か大変な事が起きたのだとは思っていましたが、
男が揃いも揃って 何という ていたらく!

このお嬢さんがいなければ、今頃 殿は殺されていましたよ!」


声を荒げる山脇に、誰も何も言えなかった。

大量の燭台全てに火を灯し、花音の傷を診る。


「…打ち掛けを着ていた事と、地面に倒れる時に斬られた事が幸いしましたね。

それほど傷は深くありませんよ。」


その言葉に、部屋のあちこちから安堵の溜め息がこぼれた。

布団の上に うつ伏せになり、傷を診て貰っていた花音もホッとする。


「よかった…。」


(…麻酔無しで縫うとか言われたら、どうしようかと思った。)


傷口は熱を持ち、ズキズキと痛んでいたが、医者に そう言われたら大丈夫な気がしてきた。

しかし山脇が怒る。


「少しも よくありません!

あなたは今回、運良く命を落とずに済んだだけです。

こんな無茶、二度としないでください!でなければ、次は本当に命を落としますよ!」


その口調の強さに圧倒され、花音は視線を落とした。


「………。」


(無茶だったかもしれないけど、
私は…これ以上 足手まといに なりたくなかった。

守られて、代わりに誰かが怪我するのは嫌だったし…。)


そんな花音を諭すように、山脇は包帯を巻きながら優しく言う。


「…殿を守ってくださった事には、感謝致します。

ですが、それは この者達の勤め。
あなたは任せていれば良いのです。

傷は深くないとはいえ、きっと痕が残るでしょう。

痛み止めの薬を差し上げますが、治るまでは、おとなしくしていて下さいね。」


「…はい。ありがとうございました。」


手当てを受けた花音は起き上がり、深々と頭を下げた。
山脇は薬の包みを花音に渡し、言う。

 

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