狼の花園〈完〉【修正版】

仲間として /一途な想い



雀のさえずりが聞こえ、朝日が奥座敷 全体を照らし始めた頃、


「…ん~…」


小さく呻いた花音は目を覚ました。


「…いつまで寝ているつもりだ?」


すぐ近くで殿の低い声が聞こえ、花音はボンヤリとした寝惚け眼で見上げる。


「ん…?」


やっとハッキリしてきた視界に、呆れた表情の殿が映り、驚く。


「と、殿様…!?」


「ああ。」


殿は短い返事をした。

不機嫌なような、呆れたような表情の殿は、花音の額を小突きながら言う。


「俺の話の途中で眠りこけ、そのまま朝まで気持ち良さそうに寝ていた。

…良い御身分だな。」


「えっ!?朝!?」


花音は信じられないというような顔で上体を起こした。

襖の隙間から朝日が射し込んでいるのを見て、朝だと実感する。


(いつの間にか寝ちゃって、そのまま朝まで寝てたんだ…!)


夜中に目を覚ますのは日常茶飯事で、
最近まともに眠れていなかった花音は、朝まで眠れた事が驚きだった。

座った姿勢で寝ていた為、少々 身体が痛かったが、頭はスッキリしている。

肩の傷の痛みも、ほとんど無い。

花音は立ち上がり、殿に頭を下げた。


「殿様、ありがとうございました!
殿様のおかげで、ぐっすり眠れました。」


「…そうか。」


目を閉じ、数回 頷く殿。

その表情が なんだか疲れているように見えて、花音は首を傾げた。


「もしかして…、眠れなかったんですか?」


心配して様子を窺う花音。殿は慌てて顔を逸らした。


「そんな筈が無いだろう。
泰平の世になったとはいえ、俺は武士だ。

どんな状況下でどんな体勢でも、眠って身体を休められるようにしている。
…武士は戦場で、満足に横になれるとは限らないからな。」


「そうなんですか?武士って すごいんですね!」


殿の言葉を素直に受け取った花音は、笑顔でそう言う。

眉をひそめ、頬を掻いた殿は立ち上がり、花音の右肩に手を置く。


「…調子が良いようなら、町に出て診療所に行ってこい。」


「あ、そっか…町に…。」


花音は急に不安そうな顔になり、手を組んで俯いた。

殿は ふうっと息を吐き、花音の頭を撫でる。


「安心しろ。独りで行かせたりはしない。
再び襲われるような事には、絶対にさせない。」

 

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