狼の花園〈完〉【修正版】

仲間として /忍の里



無事に城から抜け出して馬小屋に着いたとき、西の空が僅かに明るいくらいで、辺りはもう暗くなっていた。

馬に乗りやすいよう、袴に着替える。
花音が着替えている間に、竜胆は並ぶ馬の様子を見た。

脚のしっかりした、体の大きな鹿毛の馬を選び、鼻筋を撫でる。
馬は落ち着いた様子で、大人しく撫でられていた。


「俺達二人を乗せてくれるか?」


そんな竜胆の問い掛けに頷くように、馬は頭を下げる。
着替え終わった花音が、それを見て笑う。


「なんか その馬、竜さんに懐いてませんか?」


「まぁ、俺が遠出するときは大抵この馬だからな。
…表向きは、殿の馬って事になってるけど。」


ニヤリと笑う竜胆に、花音は眉をひそめた。


「いいんですか?そんな馬に乗っちゃって。」


「いいんだよ。殿の馬は他にもいるし。」


ニヤリと笑って言いながら、竜胆は馬に鞍を着け、軽やかに飛び乗った。
それから花音に向けて手を伸ばす。


「ほら、乗れよ!」


「の、乗れって言われても…。」


どうしたら良いのか全然分からない花音は、戸惑い、立ち尽くす。

馬とは言っても、この頃の日本に、競馬場にいるような大きな馬はいない。

花音の目の前にいる馬も、ロバより少し大きいくらいなのだが、
馬に乗った事の無い花音には、とても大きく見えた。

竜胆は花音の右側に馬を寄せ、手綱を向けて言う。


「左手で手綱を軽く持って、左足を鐙(あぶみ)に掛ければ、俺が右手を引っ張って乗せてやるよ!」


「え?こうですか?…わぁっ!?」


言われた通りに足を掛けた花音は、右手を掴まれ、力強く馬上に引き上げられた。

そのまま竜胆の後ろに座らされる。
一気に目線が高くなって、花音は声を上げた。


「うわ!すごいっ!」


背が高くなった気分になり、地面が遠く感じる。
そんな花音に竜胆が、


「のんびりもしてられねぇ!しっかり掴まれ!行くぞ!」


と声を掛けた。花音はハッとして気を引き締める。


(そうだった…!今から霞さんを助けに行くんだから!)


明確な目標があるから、迷いはしなかった。
竜胆の背にくっついて腰に手を回すと、前でしっかり組む。


「はい!お願いします!」

 

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