狼の花園〈完〉【修正版】

仲間として /正体



翌朝、


「…ん……?」


花音が目を覚ますと、長い睫毛を伏せて、殿は まだ寝ていた。


「…っ!!」


鼻がぶつかりそうな顔の近さに、花音は顔を赤くする。
その状態で一夜を過ごした事が信じられない。

ただ、眠る殿の表情は険しく、時折 眉間に皺を寄せている。
花音は不安になった。


(…もしかして、私のせいで眠れなかったんじゃ…?)


そこへ、


「大丈夫よ。殿は寝ている時、いつもこんな顔だから。」


と声がした。花音は声のした方へ顔を向ける。
そこには清白が立っていた。
手には朝食の膳が2つ。


「なかなか取りに来ないから心配して持ってきたんだけど、まだ寝てたのね。」


そんな清白の言葉に花音は驚く。


「もうそんな時間ですか!?うわ…寝坊した…!

話す事があるから、皆と一緒に食べるって決まってたのに…!」


すると清白は笑って、


「何か大事な話があるって、殿から聞いてるわ。でも、それは昼餉の時にしましょう。

それよりも今は殿の側に居てあげて。

顔見たら分かるでしょうけど、殿は眠っている時でも気が休まらないのよ。

それでも眠っているという事は、
少なくとも姫ちゃんに気を許しているって事だと思うから。」


と花音の肩に優しく手を置いて言った。


「清白さん…!」


そう言われた花音が清白の顔を見返すと、清白は微笑んで強く頷く。

花音は眠る殿の顔を見た。殿は相変わらず、気難しそうな表情で眠っている。


(…殿様が…私に気を許してくれてる…。
…そうだったら…嬉しいな。)


顔を綻ばせた花音に、清白が言う。


「それに、その様子だと殿が起きるまで動けないだろうし。」


「え?」


首を傾げる花音。
その右手を清白が見ていたので、花音もその視線を追い、すぐに顔を赤くした。

花音の右手は、殿の左手と繋いだままになっていたからだ。


「良いわねぇ、仲良しで。」


清白に愉しそうに笑われ、 花音は更に顔を赤くする。

その時、殿が急に目を開けて飛び起きた。


「…っ!しまった!朝か…!」


「はい、朝でございます。」


微笑んだ清白がそう答えると、殿は眉をひそめる。


「朝から外で用事がある。急ぎ支度をせねば。」


そんな殿に、清白は余裕の笑みを浮かべる。

 

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