狼の花園〈完〉【修正版】

偽者の日々 /女装男子もいろいろ



翌朝。
雀(すずめ)のさえずりが聞こえて、花音は目を開けた。


「……はっ!」


その目に飛び込んできたのは、華の描かれた見事な装飾の、見知らぬ天井。

花音は慌てて目を閉じる。


(これは夢よ、姫野 花音!

お夏さんの身代わりに、お城に嫁入りしたものの、殿様は女嫌いで、側室は全員女装男子で、初めてのお姫様抱っことか、初めてのキスとか、

全部全部、なにもかも夢よ!!

お母さんに専門行きたいって言ったら、絶対反対されるって思って、
現実逃避に見た夢なのよ!

次に目を開けたときは、博物館に行く日の朝で、お母さんに……反対…されるんだ…。

なんか、上手い言い方を考えなきゃ。

なんか無いかな…)


固く目を閉じ、布団の中で考える花音。

そこへ、


「姫様、御早うございます。起きていらっしゃいますか?」


と声がして、花音は思わず目を開けてしまった。

見えたのは、先程と一切変わらない、見慣れない天井。


「………。」


(…夢じゃ…ないんだ…。)


大きな溜め息をついて、花音は起き上がった。


「…姫様?開けますよ?」


襖の向こうから、遠慮がちな霞の声がして、花音は慌てて返事をする。


「は、はい、どうぞ!」


その声を聞いて、霞は恭しく襖を開けた。


「御早うございます。…よく眠れましたか?」


「えっ…と…、たぶん、寝られたと思います。」


(私…いつ寝たんだろう?)


首を傾げて考えた花音は、
昨晩の事を思い出して顔を赤くする。


(そうだ、霞さんも男の人だったんだ!
あぁ、もう、どうしよう…!なんか気まずいよ…。)


花音は俯き、膝を抱えた。そんな花音に霞が言う。


「姫様、そろそろお着替えを…。」


「えっ!!?」


慌てて立ち上がった花音は、掛け布団を掴み、身体を隠す。


「…姫様?」

 

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