狼の花園〈完〉【修正版】

花音の居場所 /誤解



真夜中過ぎ、花音は一人で自分の部屋にいた。

布団に入って瞼を閉じても、殿の事を考えてしまい、目が冴えてしまう。


(…傍にいて欲しい…けど…我が儘だよね…。
相手は殿様なんだから…。)


我が儘を言って困らせるような事だけはしたくなかった。


(殿様は忙しいのに、縁日に行く約束をしてくれた。
…これ以上 望んだらバチが当たるよ。)


そう思って寝ようとした時、中庭とは逆側の廊下から声がした。


「…姫?起きてる?」


声の主は鈴蘭だった。


「え?あ、はい、起きてますけど…?」


こんな夜更けに何の用かと戸惑いながら、上体を起こして返事をすると、鈴蘭が襖を開けた。

手にした蝋燭の灯りで、暗闇に鈴蘭の微笑みが浮かぶ。

鈴蘭は、花音が一人でいるのを見て言った。


「殿は来ていないのね。」


「…はい、夜は用事があるって言ってました。」


伏し目がちに花音がそう答えると、鈴蘭は蝋燭の火を行灯に移して笑みを浮かべる。


「それは好都合だわ。」


「…え…?」


行灯にぼんやりと照らされた部屋の中で戸惑う花音。

その表情を見ながら、鈴蘭は傍に座った。


「殿は今宵も、あなたを ほったらかしているのね。」


鈴蘭にそう言われ、花音は微笑む。


「殿様は忙しいですから。」


「傍にいて欲しいとは言わないの?」


「い、言えませんよ、そんな事…!迷惑…掛けたくないですから。」


首を振って俯く花音の顔を覗き込むようにして、鈴蘭は言った。


「少しくらい、我が儘を言っても良いんじゃない?」


けれど花音は首を振る。


「そんな事…出来ません。

殿様は私を妻だと言ってくれました。
だから本当は私も、妻らしく殿様を支えていきたいんですけど、何も出来ない…。

だからせめて…困らせたくないんです!」


布団を握り、力強い瞳でそう言った花音に、鈴蘭は妖しげな笑みを浮かべた。


「妻…ね。…ならば殿から、愛していると言われた?」


「え…?」

 

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