狼の花園〈完〉【修正版】

雷雨の中に /強さの裏に



花音の部屋につき、殿が鈴蘭を布団に降ろすと、鈴蘭は微笑みながら言う。


「皆、大袈裟ですね。もう大丈夫ですよ。」


「嘘を言うな。風邪でもひいたのだろう。しっかり休め。」


殿がそう言うと、鈴蘭が起き上がる。


「風邪なんて ひいていませんよ。…証明しましょうか?」


「何?…っ!?」


眉をひそめた殿は目を見開いた。
鈴蘭が急に飛び掛かり、拳を繰り出してきたからだ。


「何を…!」


戸惑う殿に構わず、鈴蘭は拳を振るう。

相手が病人だという事もあり、殿は避ける事に徹した。

そんな殿の隙を突き、鈴蘭は肘を打ち込む。


「うっ…!」


みぞおちに肘が入り、殿は思わず膝をついた。
鈴蘭は殿を一瞥し、そのまま部屋を出ようとする。


「待て!」


殿の制止も聞かず、鈴蘭は部屋を出た。


「きゃっ!」


廊下に出た途端に、水を汲んできた花音とぶつかり、桶が床に落ちて水が溢れる。

思いっきり水を浴び、相手の顔を見た花音は目を丸くした。


「えっ!鈴蘭さん!?」


そんな花音の横をすり抜け、鈴蘭は自分の部屋に入ろうとする。

しかし、


「させません!」


霞が姿を現し、鈴蘭の首に後ろから腕を回した。


「調子が悪いのなら、大人しく休んでいて下さい。」


そう言う霞に、鈴蘭は言い返す。


「なんともないわ。手を離して…!」


すると霞は小さく微笑み、


「…普段の鈴さんなら、こうも容易く後ろを取らせたりしませんよ。」


腕に力を込めて首を絞める。


「くっ…!」


鈴蘭は抵抗したが、本調子ではない状態で忍の首領に勝てる筈もなく、気を失った。


「…手荒な真似をして申し訳ありません。
ですが、悪く思わないで下さいね。」


当然 鈴蘭には聞こえていないが、霞は謝り、身体を抱き抱える。


「…霞さん、鈴蘭さんは…?」


心配そうに様子を窺う花音に、霞は微笑み掛けた。


「心配ありませんよ。気絶させただけですから。」


そこへ殿が胸を擦りながら現れる。


「すまない。助かった。」


「いえ。…しかし、こんな鈴さんの姿、初めて見ましたよ。」


戸惑いの表情を浮かべる霞に、殿も目を伏せて頷く。


「…俺もだ…。」

 

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