狼の花園〈完〉【修正版】



抵抗し、吐き出そうとしたが、
殴られた衝撃が残っていて、脳が揺れているかのように感じていた花音は、
そのまま飲み込まされてしまった。


(ヤバい…!これは絶対にヤバい!逃げなきゃ…!)


そう感じていたが、身体がいうことを聞かない。

手拭いで声が出せないように口を塞がれ、自分が溝から引き上げた大八車に乗せられた。

手足を縛られ、積み荷と共に大八車に縛りつけられる。

上から藁の布を被せられ、花音の姿は外から完全に見えなくなった。

やがて大八車が走り出す。


「っ…!ん~っ!!」


花音は声を上げて暴れてみたが、思うように動けず、ガラガラという大八車の音に声も掻き消される。


(…っ…殿様…ごめんなさい…!)


不安の中で殿に謝り、花音の意識は闇に落ちた。


一方、殿は花音と別れた場所に戻っていた。

権兵衛達が、殿の無事を祝って宴会をしたいと言うので、それなら花音も一緒にと思い、迎えにきたのだ。

しかし花音の姿は無く、
診療所にも来ていないと知り、殿の胸が騒ぐ。


(…花音…どこだ…?)


あちこち捜し、町の皆にも声を掛けて捜し回ったが見つからず、
ついには日が傾き始めた。

そこへ、慌てた様子の霞が走ってくる。


「殿っ!こちらでしたか。急ぎ お耳に入れたい事が…!」


「なんだ?竜が見つかったか?」


焦りつつも殿が尋ねると、霞は首を振った。


「いえ、その事ではなく…っ!」


報告しようとした霞は、気配を感じて横を向く。

それを見た殿も同じ方向に向けると、そこには暗い表情の竜胆がいた。


「っ!竜!今まで何処にいたんだ!?」


殿が声を掛けると、竜胆は それに答えず、険しい表情で尋ねる。


「なぁ…教えてくれよ。どうして上屋敷に俺の姉さんが居たんだ?」


それを聞いた殿は目を見開き、顔を強張らせた。竜胆は続ける。


「答えろよ…なんで お七姉さんがあそこに居たんだ…!!」


声を張り上げた竜胆を見て、
霞は苦しそうに目を閉じ、殿に報告した。


「江戸からの報せです。上屋敷から あの方が…
正室が…逃げました。」


 

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