狼の花園〈完〉【修正版】

苦難と試練 /恩愛



その後、花音が目を覚ますと、そこは奥座敷の自分の部屋だった。

霞が花音に気付き、行灯の灯りに照らされながら言う。


「姫様…お目覚めになられましたか…!」


安堵した様子の霞に、花音は首を傾げる。


「霞さん…私…?」


「…余程 疲れていたのでしょう。
姫様は丸一日、眠ったままだったのですよ。」


霞にそう言われ、花音は眉をひそめた。


「丸一日?」


その問いに頷き、霞は落ち着いた口調で言う。


「はい。
間もなく夜が明け、日が昇ります。

…日食の…日が。」


「…!」


花音は慌てて起き上がり、霞に尋ねた。


「殿様は…!?」


それに対し、霞は険しい表情で答える。


「…山脇先生が手を尽くして下さいましたが、まだ目覚めていません。

先生は…覚悟をしておいた方がよいと仰せでした。」


「そんな…!」


一気に血の気が引き、花音は俯いた。霞が続ける。


「…そんな中でも、殿は あの銅鏡を握ったまま、離そうとしません。

姫様に対する強い想いが、そうさせるのでしょう。」


それを聞いた花音は唇を噛み締め、着物の裾を強く握り締めた。


(…私が拐われたりしなければ…!

それに…撃たれて すぐに手当てが出来てたら、もしかしたら…。

私は傍にいたのに…!私が気付いていたら…!)


今更 悔やんでも仕方無いのだが、胸が締め付けられる思いがする。
それから顔を上げて尋ねた。


「お七さんは…!?それに輝幸さんも…!」


「……。」


尋ねられた霞は答えるべきか悩み、隣の部屋に視線を向ける。
考えながら慎重に口を開いた。


「輝幸様は脚に怪我を負っていたので、今は私の部屋で休んでいます。

怪我の具合は悪く無いので、心配はいりません。

…お七殿は…その……」


言葉を濁した霞は意を決して姿勢を正し、静かに言う。


「…お七殿は…自ら命を絶ちました。」


「えっ…?」


目を見開く花音を前に、霞は目を閉じる。


「…始めから死ぬつもりで、
お七殿は銃に大量の火薬と銃弾を詰めていたのです。」

 

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