白雪姫とヴァンパイア(1)【完】

第二章 目覚めゆくもの /白巫女


夕飯の時間。
ノックの音に、私は参考書から顔を上げずに口を開いた。

「ありがと空也、入っていいよー」

いつも私が夕飯を食べるのは自分の部屋だ。
なるべく勉強してたいし……っていうのは、まぁ、半分建前なんだけど。
だから私の部屋には、いっつも下の弟である空也が運んでくる。

けれど。


「それじゃあ、入らしてもらうよ」


聞こえてきたほんわかした声に、私は数秒固まった後、急いでドアの方を見た。

いつもの見慣れたお盆。
それを持っているのは、優しい笑顔を浮かべてる……

「お、お祖父さん!?」

「お! お勉強頑張ってるねぇ、偉い偉い」

動揺する私を気にした様子もなく、お祖父さんはにこにこ笑ってお盆をミカン箱の上に置く。

そうして、お祖父さんは私の部屋を見回すと、眉根を寄せて考える。

「いい加減、由季ちゃんの机を買わないとなぁ……」

「大丈夫だよ! これで十分!!」

慌てて私が言えば、「そうかい?」とお祖父さんが納得できないような表情で聞く。
だけど、私は急いで何度も頷いた。

「机を使うような勉強は学校でやっちゃうから、家ではほとんど使わないよ」

「そうか……それならいいんだけどね」

そう言ってから、お祖父さんは申し訳なさそうな顔をした。

「……すまないね、由季ちゃん」

何が。
なんてことは、聞かなかった。
ただ、私はそれに笑顔を返す。

「大丈夫だよ」

大丈夫。
まだ、私は頑張れる。

だって私は、いつでも明るい元気なとこが、唯一の取り得なんだから。

「叔母さん達も気遣って下さるし、弟達もいるし、友達だっているんだから!」

「……そうか」

頷いて、お祖父さんは目を細めた。
口元に、薄い笑顔が浮かぶ。

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