白雪姫とヴァンパイア(1)【完】
第三章 君との絆、繋ぐのは /再会
「Bonjour,由季」
「おはよう月」
既に恒例になりつつある朝のやりとり。
玄関から出た私は、待っていてくれた月を見上げる。
そうすれば、私を見下ろしていた月が首を傾げた。
「今日はどうする?」
何を、とは言わないけれど。
みんながいない朝の時間帯に、そう尋ねられることなんて一つだ。
私は少しだけ迷いながら、月の顔を見る。
そこに浮かんでいるのは、いつもと変わらない微笑。
優しいそれに、私はゆっくりと口を開いた。
「……屋上で良い?」
一応、尋ねる形で言葉を返せば。
月は気にした風もなく、にこりと私に笑ってくれる。
「由季が望む儘に」
了承した内容は、もちろん、お弁当のこと。
あれから月は、毎日私と月の分を別々に作ってきてくれてる。
それはきっと、私がみんなと食べたいって思ったときのために。
……だけど、あれから一週間。
私はあれ以降、一度もみんなと食べていない。
それは、何となくでもあるし。
やっぱり気まずかったから、っていうこともある。
マッチがいて、倉前くんがいて、二人の友達がたくさんいて。
それはいつものことだったけど……
どうしてだろう。
──月と二人でいる方が良いって、思ってる自分がいる。
逃げ出したと言えば、そうなんだろうし。
ワガママだと言われれば、私には反論しようがない。
月は私に付き合ってくれるから。
必然的に、月がみんなと一緒に食べたのだって、あの一回だけになる。
そう思い当たって、私は自嘲気味に笑った。
「ごめんね、我が儘言って」
けれども私がそう言っても、月は相変わらず笑ってて。
「そうでもないさ」
さらりと、そう返してくれる。
だけど、本当にそうかな。
優しい月を、付き合わせてるだけのような気もするし。
私が一人にならないようにって、気遣わせてる気もするけど。
首を傾げた私に、月は楽しげに笑った。
あらすじ
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HP
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