白雪姫とヴァンパイア(1)【完】

第三章 君との絆、繋ぐのは /昔の話


深夜。
草木も眠る丑三つ時。
吹き抜ける夜風を感じながら、漆黒の外套を纏った少年が一人。

静かな夜に、歩みを止める。

その灰色がかった薄青の目で、見上げた先にある建物。
『堀川写真館』と書かれた看板を掲げる一軒家に、月はそっと唇を開く。

「堀川早苗……」

静かに呟いて、次にその視線を右へと向ける。

「……稲荷神社……」

由季と訪れた神社。
その方角へと目を向けて、それから僅かに目を細めた。

「…………稲荷神」

祭られている神を呟いたきり、再び月は沈黙する。

そうしてしばらく思案した後、再び写真館へと視線を戻した。

その先にあるのは、三階の窓。

雨戸の閉められたそれからは、中は決して見ることが出来ない。

それでも。

「…………成る程、」

やがて納得したように呟いて、月は視線をそこから外した。

「…………、」

地へと落とされたそれは、決して何を見ているわけでもなく。
そうして僅かに俯きながら、月はふと唇を開いた。


「──出て来たらどうだ? Sorciere」


その、僅かに大きくなった声音に。

カツン、と、背後でアスファルトを踏む音がした。

現れた少女……水梨朔は、月の背後でこてりと小さく首を傾げる。

「……気付いていたのね」

「ああ」

振り向くこともしないまま、月は言葉を返した。
その口元に、僅かな笑みが浮かぶ。

「それも最初からな」

「……意地悪ね」

さして気分を害した風でもなく、朔は僅かに肩を上げてみせる。

それを空気で察したのか否か、月は顔から再び笑みを消す。

「そちらこそ、何故此処に?」

「貴方が此処に来ると、夢で見たから……」

「……成る程」

朔の返答に、月が動じることはなく。
そっと目を伏せ、納得したように唇を開く。

「予知夢か」

「そういう事……」

そっと肯定して、朔は視線を目の前の月から、その奥の建物へと向ける。

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