白雪姫とヴァンパイア(1)【完】

第三章 君との絆、繋ぐのは /真実へのカウントダウン



吹き抜ける夜風に吹かれながら、一人の少年が神社の境内へと足を踏み入れた。

十一月も末に入ろうとしている時期。
そして、真夜中という空気の凍てついている時間。

それにも関わらず外套すら身に纏わない、高校の制服姿の少年が、寒さを感じている様子はなく。
彼はひとけのない神社を進むと、本殿の前で足を止める。

静かに見上げた先にあるのは、朱塗りの本殿の扉。

「…………」

それを、少年がただただ沈黙して眺めていれば。

敷石を踏みしめる音が、静寂に満ちていた境内に響いた。

「毎晩、魔力を発する者がいるかと思えば……」

それにゆっくりと少年……月が振り返れば、その灰色がかった薄青の目には、一人の老人に姿が映った。

老人……神主は、月の姿を認めると、その眼差しを険しくする。

「……やはり人外の者だったか……」

呟きのような声は、確かに月の元にも届いたが。
月は、ただただ無表情で神主を見遣る。

それに表情を変えることもなく、神主は真っ直ぐに月を見据えた。

「赤城月……だったかな?」

その、確認する言葉に。

月は、ふ、と口角を上げた。

「“人外の者”か……」

楽しげに紡がれた声は、先日両者が言葉を交わした時よりも幾分低く。

ある種の異様さを含んだそれは、ともすれば畏怖すら感じさせる。

「私を人外と言うならば……」

神主を見遣る眼差しも、余裕に満ち溢れており。
到底子供には意識をしても出せないだろう、妖しさを含んだ眼差しで。


「其方(そちら)もまた人外だろう」


疑問形ではないそれは、ある種の確信に満ちていた。

月は険しい眼差しを向ける神主に一笑した後、本殿へと視線を映す。
そこに祀られているのは、稲荷神。

「神にも通ずる力を持った、白狐の血を引いている……」

この神社に伝わる伝説。
神を祀っているこの神主の一族は、稲荷神と人間の子孫であるという言い伝え。

そしてそれは、事実であると。
そう確信しながら、月は再び神主へと視線を向けた。

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