白雪姫とヴァンパイア(1)【完】

第三章 君との絆、繋ぐのは /大事な君へ


じっと自らを見つめる視線に気付いた月は、差し障りのない微笑を浮かべて、視線の主──早苗の母親を見た。

「何か?」

くすり、といったその笑顔に、テーブルの向かいに座っていた彼女もまた、楽しげな笑みを浮かべた。

「あらっ! ごめんなさいね、じっと見たりしちゃって」

そう一度謝罪してから、改めて月の顔を見る。

「早苗の話を聞いたときは、大袈裟だと思っていたけど……」

一度区切り、にこりと再び笑顔を浮かべた。

「あながち、大袈裟じゃなかったみたいだわ」

彼女のセリフに、出された紅茶を口にしながら「お話?」と月は首を傾げる。

「僕に関して、堀川さんが何か仰っていたんですか」

その質問に、一つ彼女は首肯して。

「色々とね」

「色々、ですか」

含みを持った月の言葉に、彼女は悪戯な笑顔を浮かべた。

「気になるの?」

何が、とは言わないが、それだけで月も理解したのだろう。
その楽しげな問いかけに、月もまた口角を小さく上げる。

「気になりますね」

静かにカップを戻しながら彼女をじっと見つめる月に、彼女はふふ、と笑みを零して。

「別に悪い話じゃないのよ?」

一度そう断ってから、今度は彼女の方が自分のカップを持ち上げた。

「由季ちゃんが好きになるのも仕方がないくらい、素敵な男の子だって言ってたわ」

「そうですか」

「ええ……」

月に一度首肯して、彼女は娘に良く似た瞳をそっと閉じる。


思い出すのは、昨日のこと。

毎日のように娘が話すのは、小学校時代の唯一にして一番の親友である少女のことだった。
もちろんそれは思い出に浸(ひた)るものであり、「そろそろ新しい友達を作りなさい」とやんわり勧めたことも少なくなかったが。

それが最近では、高校で再会したらしく。
懐かしい少女との新しい話題を話していた娘の話には、それまでいなかった一人の少年が登場するようになった。

どうやらその少年が、少女と恋仲であるらしく。
自分が知らぬ間に少女と親しくなっていた少年に、早苗は昨日も溜め息交じりに彼のことを話していた。

0
  • しおりをはさむ
  • 2580
  • 1100
/ 466ページ
このページを編集する