白雪姫とヴァンパイア(1)【完】

第一章 斯くて世界は廻り出す /始まりの朝


大丈夫。

今は何も上手にできなくたって、努力をすればできるはず。

大丈夫。

誰も味方がいなくたって、一人でも頑張れば何とかなる。

そう、大丈夫。

だって私は、いつでも笑っていられるとこが、唯一の取り得なんだから──……



* * * * *



「由季ちゃんっ! 朝だよーっ!!」

「んー……」

下の弟である空也(くうや)の幼い声が響く。

朝に弱い私は、寝ぼけたまま目をこすろうとして、その手が硬い物に当たった。
どうやらまた眼鏡をかけたまま寝てたみたいだ。

それに気付いたんだろう、空也は眉根を寄せて私をじっと見上げてくる。

「もーっ! 由季ちゃん、勉強したまま寝たでしょー?」

「はは……ごめんごめん」

机のない私の部屋。
即席のミカン箱の上には、数学のノートと参考書。
その上に眼鏡をかけたまま伏せて寝てれば……うん。まぁ、さすがに小学生の空也にもバレるか。

苦笑しながら謝罪した私に、空也は「もー……」と呆れながらも、一応は許してくれたらしく。
次の瞬間、その顔に浮かんだのは、正反対の明るい笑顔。

「今日は朝ごはん一緒に食べれる?」

期待の込められた目に、私は苦笑して首を振った。

「ごめん。先生にこれ聞きたいから、早く行かなきゃ」

「えーっ!? またー?」

「ごめんごめん」

私の謝罪に、空也はがっくりと肩を落とした。
そうして、ちらりと私をその幼い瞳で見上げてくる。

「もうずーっと由季ちゃんとごはん食べてないよ……」

「叔父さんも叔母さんも、お兄さんもお姉さんも……聡(さとし)だっているでしょ?」

お祖父さんは散歩に出かけてるだろうけど、この家には叔母さん夫婦と、その子供であるお兄さんお姉さんがいる。
それに、上の弟である聡も。みんな空也を可愛がってくれてるから、寂しいことなんてないはずなのに。

「でも……」

「あ、ほら、叔母さんが呼んでるよ!」

まだ何か言おうとした空也。その空也を一階から呼ぶ、叔母さんの声が微かに耳に入ってきた。
時間からして、きっと朝ごはんができたんだろう。

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