白雪姫とヴァンパイア(1)【完】

第二章 目覚めゆくもの /それぞれの笑顔


あ。

教室に入った瞬間、そんな可愛い声が響いた。

「姫ちゃん、おはようっ!」

「おはよう、マッチ」

ぴょこぴょこと、まるでウサギのように私のそばに寄ってくる。

とは言っても、どうやら一番廊下側の最後尾に座ってる女の子の周りに集まってたみたい。
中心にいたマッチが移動する距離はそんなになかった。

教室の後ろが、一番スペースがあって溜まりやすいんだろう。
しかもこの人数だ。
クラスの女子の大半がここに集まってる。

もちろん、その中心はマッチで。
そのマッチは、私の手にした封筒にすぐに気付いて首を傾げた。

「何持ってるの?」

「ああ。これ、マッチへみたいなんだけど……」

私がそれを渡すと同時。
教室に、女子の黄色い悲鳴が上がる。

「キャー!」

「万智ちゃんやるーっ!」

「何々? ラブレター!?」

やっぱり、みんなそういう年頃なわけで。
興味津津とばかりに、あっという間にマッチの周りに円ができる。

覗き込む女の子達。
その輪の一歩後ろで、私はマッチを前から見てる。

「『今日の昼休み、中庭の花壇の奥に来て下さい』……?」

マッチの読み上げた文章に、女の子達はそろって顔を見合わせた。

「それカンペキ呼び出しじゃん!」

「で、で? 誰からなの!?」

「わかんない……差出人の名前、ないし……」

困ったように、マッチは封筒や便せんを見る。
確かに、封筒には差出人の名前がなかった。

それも、よくあること。
呼び出しに出向かなかったことを考えてのことだろうけど、かえってそれが不安にさせるみたいだ。

確かに、相手が不明なら怖いって気持ちもわかるし。
けれども呼び出すときに名前を書けない勇気も、何となくわかるわけで。

「いいじゃん! 行ってみなよ!!」

「でもでも、誰かわかんないから怖いし……」

「あー、確かにねー」

「何かされても困るしね……」

不安そうなマッチに、最初は勧めていた子達も納得したように頷いた。

けれども、そう。
その中の一人が、にんまりと笑顔を浮かべた。

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