白雪姫とヴァンパイア(2)【完】

第五章 月光囁く夜の唄 /少年達




日曜日。
料理の最中に冷蔵庫の中を見て、月がふと牛乳パックを持ち上げた。

「もうあまり残っていないな……」

その呟きと共にパックを揺らせば、確かに聞こえてくる音は頼りない。
きっとそう残っていないんだろう。

お手伝いをしていた私は、それに動かす手を止めた。
正直一緒に料理していても、あんまり私が役に立てることもない。
それなら買い物に行った方が、多分役立てるはずだ。

「なら、私が買ってくるよ」

「なら私も……」

「大丈夫だよ! それに月はお昼ご飯作ってるし……」

きっと、私が病み上がりだから心配してくれているんだろう。
何かに襲われたなら、まだ月の魔力が残っているから大丈夫だけど、体調不良はそうもいかない。

月の進言は有難いけれど、私はそっと首を振った。

「これくらいお手伝いさせて?」

「……ああ」

少しの間があったのは、きっと迷っていたから。
それでも了承してくれた月は、やっぱりどこか心配そうな顔をする。

「気を付けて行くんだぞ? 無理はしてくれるなよ。後……」

「もー、心配し過ぎだよ、月」

まるでこれじゃあ、初めてのお使い状態だ。
思わず苦笑しながら言えば、自覚がないのか「そうか?」なんて不思議そうに首を傾げる。

「そうなら良いんだが……」

「大丈夫、無理しないよ」

「……そうか」

月が納得したのを確認して、私は玄関へと向かう。
ついでに色々と買う物をメモしてもらって、私は靴に履き替えた。

今日は大分調子が良いから、外出できるような服に着替えてある。
あとはもう、用意してくれていたんだろう上着とマフラーを身に纏えば準備万端だ。
そうして小さな鞄を片手に、私は月を振り返った。

「じゃ、行ってきます!」

「ああ、気を付けてな」

「はーい!」

月に見送られて、私は家を後にする。
叔母さん達は私にお使いを任せることなんてないから、何だかそれが新鮮だった。

些細なことかもしれないけど、確実に役立てる仕事。

「ちょっとは役に立たないとね……」

色々と月にはお世話になってるし。
それを少しでも良いから、役立つことで返していきたいと思う。

私にできることなんて、ほんの少しだろうけど。
それでもやっぱり、何もせずにいるよりはきっと良いはずだ。

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