白雪姫とヴァンパイア(2)【完】

第五章 月光囁く夜の唄 /十六歳の誕生日




マッチの誕生日会が終わり、次第に人が帰っていく中。
最後に挨拶を済ませて、家を出ることになった私と月に……ううん。

私と一緒にいた月の元に、マッチが小走りに駆け寄った。


「またいつでも遊びに来てねっ! 赤城くんっ!!」


にこにこと月を見上げる笑顔は、いつもよりもすごく可愛くて。
本当に嬉しそうなその表情から、それが本心だってことが一際強く伝わってくる。

月の後ろでそれを眺めていれば、マッチのお母さんもまたマッチの後ろまで進み出て。

「またいつでもどうぞ? 赤城くんっ!」

マッチとよく似た面差しで、月へとにこやかな笑顔を向ける。
その様子からは、期待の色が見てとれた。

複雑な気持ちになりながら……それでも私は、月からもらった一輪の薔薇に視線を落とす。

はっきりと示してくれた、気持ちの証。
これがあるから大丈夫だと、自分に強く言い聞かせる。

そうして再び月を見れば、月は薄い微笑を浮かべた。

「……ええ、」

軽く頷く月に、全く不安じゃないと言えば嘘になるけれど。
そう二人に返した月は、不意に私の肩を抱き寄せた。


「また、由季と一緒に呼んで下さい」


はっきりとそう告げた月に。
マッチも、マッチのお母さんも……私も、軽く目を見開いた。

けれどもそれを気にした風もなく、月は肩を抱き寄せた手で、今度は私の手を握る。

「帰ろうか、由季」

「あ……」

優しく笑いながら、私へと顔を寄せる月。
それに少しだけ心臓が跳ねたけど……それ以上に、こっちを見ている二人の視線に意識が向かう。

どう答えるべきか、少しだけ迷って。
それでも結局、そんなの一つしか私にはない。

「……うん」

こっちを見ている二人を、極力視界に入れないように、意識しないようにしながら。
小さくそう頷けば、月が嬉しそうに笑ったのが分かった。

「失礼します」

「……失礼します」

隣の月が軽く頭を下げたから、私もそれに倣って小さく続く。
二人はただ茫然とした様子でこっちを見ていて、どう思ったのかは分からない。

……月の気持ちを、知ったのか。


……幼馴染だから、と、受け取られるのか。


それは、私には分からない。

……だけど。

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