車椅子でキス

5.瞳






歩いて正解だった。

人目は気にしなくてはいけないけれど、夕焼け色に染まるハルさんは、いつまででも見つめていたいほどに、美しく輝いている……。

それは、世の女性がやきもちを妬いてしまう程……。


「手、繋げなくてごめんね」

もう何度目かのその言葉。
一緒に住む前から、ハルさんはいつもそう言う。

「もう少し暗かったらな~」
「暗くてもいけませんよ」
「暗ければいいよ!」
「いけません」

みるみるハルさんの頬が膨らんでいく。

それがリスのように可愛くて、私の口元は緩んでしまうから、ハルさんは罪な人。


「カエルみたいな目して、よく言うよ!」
「カエル!?何てことを……」
「カエルじゃん!……そんな可愛いカエル、超レアだけどさ」

涙で腫れた目のことだろう。
褒められているのか、貶されているのかわからない。

「……どっちですか」
「……褒めてる」
「ありがとうございます」
「どういたしまして」


ゆったり歩いて、気がつけば周りには車がいなくなっていた。


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