アザレアが咲いている。

番外編*春野 秋桜









***







「ねぇねぇ、氷室 凛ってどんな子?」






こう尋ねられるのは、一体何度目だろうか。


いい加減聞き飽きたその台詞に、「本人に聞いたらー?」と振り返ることなく早足でその場を離れ、背後から追ってくる「何あれ、感じ悪」という言葉を受け流す。


確かにちょっと冷たいと思われるかもしれないが、いかんせんうちも今の子と面識は一切ないし。


感じ悪って言われてもね~、とお決まりの楽観主義で適当に受け流すうちはきっと、側から見れば彼女の金魚のフン程度の存在で。






「おまたせ~!もう何か頼んだー?」




皆んなが興味あるのは、こっち。





「カレーとラーメンとオムライスとカツ丼は頼んだ。あと日替わり定食」





うちの金魚、凛である。



いや、ていうか頼みすぎじゃない?





「え、そんなにお腹減ってたの?」


「私じゃなくてこの二人がね。気持ち悪いほど食べるから正直見てる私が吐きそうになってる」


「リンリンも食べる?うまいよこれ」


「あ、凛さんゲロ袋ありますよ」


「お、よかったじゃん、ゲロ吐くならここに吐きなよ」


「本気でゲロりそうなら早めに言ってくださいね、頑張って受け止めるんで」


「…お願いだからカレー食べながらゲロゲロ言わないで」




まるで母親と大きな子供二人みたいな、口に出したらすぐさま「こんなごつい派手な子供産んだ覚えないんだけど」とツッコまれそうな光景に密かに笑みをこぼし、凛の隣に腰掛ける。


すると凛は、当たり前のように用意してくれていたうちの分の飲み物を差し出してくれた。


うちがいつも、飲んでるものを。






「……泣きそう」


「は?」





最初はあんなに警戒してたのに、今ではこうやって一緒にご飯を食べてる。


不審げな顔をしながらも「え、秋桜の好きなやつじゃなかった?」と名前を呼んで、うちが好きなものを覚えてくれている。


それだけでも感動するというのに、当初とは比べものにならない程の大きな進歩に普通に泣きそうになった。



ルカさんも臣さんも呆れたようにうちを見るのものの、普通にうちの存在を受け入れてくれていて。




「そういやさっき誰かに捕まってたけど、知り合い?」


「ぜーんぜん!うちここでは凛しか友達居ないから!」


「……そんな堂々と言わなくても、」





だからこそ周りにあれこれ聞かれる事が増えたのだろうが、なんと言われてもうちは凛と、この四人で一緒に居たいと願ってしまうのだ。










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