アザレアが咲いている。

化けの皮剥がれる

 
 
***
 
 
 
 
「で、いつまで経ってもやめねーもんだから東城さんに平手打ち一発かましてやったって訳?」
 
 
「………だったら何」
 
 
「ぶっひゃひゃひゃ!!いやー、もうリンリン最高!!」
 
 
「…………」
 
 
 
 
 
 
 
……誰かこのふざけたピンク頭ぶん殴ってくれないかな。
 
 
 
 
「普通、あの東城さんに平手打ちかますかー?」と大ウケするチカに、思うずチッ、と舌打ちがこぼれる。
 
 
 
 
事の発端はなんだったか。
 
もういっかい、と恭に遠慮なくキスされた後、最初は妥協していたものの、そのあまりの長さに悶えること数分。
 
 
こっちは酸素が足りないってのに、まったく唇を離す気のない恭に思いっきり平手打ちをかましたのはもう一週間も前のことだ。
 
 
 
広間の一件以来、仕事で居なかったチカに「あのあとどうなった?」と聞かれたので正直に答えたがそれが間違いだった。
 
 
現に奴は死にかけている。
笑すぎで。もういっそのことそのまま死ねばいいのに。
 
 
 
しかもキャラを作るのですら放棄し始めたようで、最初のヘラヘラキャラは消え失せたらしい。
 
 
 
 
 
 
そんなチカの隣で、
密かに肩を震わせている奴が一人。
 
 
 
 
 
 
 
「……笑いたければ笑えば?臣」
 
 
「ぶふっ…もう、無理でっ…ぶはっ」
 
 
 
 
 
包丁を持った方の手がダンダン荒ぶるのもお構いなしに笑い出す臣に、チカもヒーヒー腹を抱えて笑い出す。
 
 
正直言って台所でデカイ男が爆笑してる図は気持ち悪い。それに挟まれてる私は尚更。
 
 
 
それでも笑いつづける赤とピンク頭に、私は小さくため息をついた。
 
 
 
 
 
 
「いやー、まさかあの人に平手打ちできる人間が居るとはねぇ。しかもキスが嫌で引っ叩いたとか、リンリン世の女達を敵に回したよ?」
 
 
「確かに。東城さんの頬に紅葉型って、似合わなさすぎて笑そうになりましたよ。まぁ、広間の連中は慌てふためいてましたけどね」
 
 
「あぁ、だから今だにリンリンは邪険にされてるんだ。納得納得」
 
 
 
 
 
 
…いや、笑い事じゃないんですけど。
 
 
 
恭を引っ叩いて以来、
他の連中からの風当たりが余計に厳しくなったのはきっと気のせいではないと思う。
 
 
 
なんせ、ここの主をぶん殴ったも同然なのだから仕方ないっちゃ仕方ないのかもしれないけど、嫌がらせとかそういうレベルじゃない気がする。
 
 
 
 
恭が留守の時は当たり前のように食事がないし、トイレに行くために普通は恭と私しか通らない廊下を歩いていたらどこからともなくやって来て盛大にすっ転ばされる始末。
 
ちなみに「さっさと出てけよ」という言葉つきだ。
 
 
 
一回だけ食事が出てきたこともあったけど、怪しくて調べてみれば案の定茶碗の底からカサカサ動く黒光りする物体(地味に生きてる)が出てきて、あの時はさすがにブチギレそうになった。
 
 
 

とにかくやることが汚いのだ。
精神的にも、物理的にも。
 
 
私が恭に言わないとわかったからかだんだんやることが派手になってきている気がするし、ただ飯がダメなら手伝おうと台所に来た時には綺麗にガン無視された。
 
 
 
 
恭自体、
 
「初めてキス中にぶっ叩かれた」とあの無表情に近い顔からは想像もできないほど爆笑してたのに。
 
 
 
本人より外野がうるさいのは、
なぜなんだろう。
 
 
 
 
 
 

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