ファシネーション【完】

第4章 /ひとり



翌朝、ごはんの支度をしている私のところに、大和くんは静かに近寄ってきた。



「おはよう」



ぎこちないかもしれないけれど、とりあえずは笑いかけておく。


昨日しっかり泣いたから、今日からはきっともう大丈夫。



大和くんの表情はそんなに明るいものではなかった。



「……はよ。菜緒ちゃん、昨日の話だけど」


「うん?」


「あれ、本気?」



なんとも言えない顔をして、そう問うてくる大和くん。


私は真面目な表情に切り替えてすぐに返答した。



「うん、本気だよ」


「……そーなんだ」



俯き加減でダイニングチェアに腰掛ける。



なにがそんなに貴方のテンションを下げさせているのだろう。


私を抱けないこと?
大好きな彼女がいるのに?



逆に疑問なんだけど、どうして付き合いたての彼女がいながら他の女を抱くことができるの?


片想いと両想いとではまるで意味が違うのに。



おかしいよ、大和くん。


ずるすぎるよ。

0
  • しおりをはさむ
  • 1051
  • 450
/ 300ページ
このページを編集する