夜の牙 上 【完】

第三章 /信用




「ただいま」



リビングのドアを開けて、私は久々にお母さんの顔を見た。



「あぁ、おかえり」



ぶっきらぼうに答えたお母さんは、私の顔を見る事はなく、微笑みを浮かべて赤ちゃんを抱いている。



そこに、恐る恐る近づいた。



「お母さん」


「なによ?」



鬱陶しそうに振り返るお母さんに、私は逃げ出しそうになりながらも言った。



「おめで、とう」



昔から口数は多い方ではなかった。


親しい人にこそ、あまり大切に思っている言葉が出てくれなかった。




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