夜の牙 下 【完】

第五章 /愛惜






意識がだんだんと冴えてくる時、いつも温もりが私を包んでいる。


それは時に気分的なものであったり、実際に温もりに包まれていたりする。



その温もりは、私をとても幸せで、優しい気持ちで満たしてくれる。



けれど、それと同時にどうしようもなく切なくなるのはなぜだろう。


胸が苦しくなって、哀しくなるのはどうしてだろう。



今の私にはわからない。



ただ、この温もりに縋って、助けられて、守られている今、思うのは、この温もりをくれる人に私もそれをあげたい。



私も、彼に温かで優しい気持ちになってほしい。



いつももらってばかりだから、今度は私が。



「大好き」



そっと彼の髪を撫でて、聞こえないように呟いた。



―――そんなある朝。





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