夜の牙 下 【完】

第七章 /初恋







「…は?」



多分、馬鹿みたいに間抜けな顔をしていたと思う。



杏樹は、わけがわからないと言いたげに首を傾げていて。



春瀬さんの表情は窺えなかった。



「…だって、」



口内が渇いて、うまく話せている気がしない。



「春瀬さん、が…悠理くんは、」


「あれも嘘。春瀬に頼んで嘘ついてもらった」



何でも無かったかのように告げた悠理くんに、私は拳を握りしめていた。



手のひらに爪が食い込んで痛い。



「…どこまでが嘘?」



思えば、どうして私は初対面である春瀬さんの言葉をあっさりと信じたのだろう。



充分信憑性はありそうな話だったけれど。


証拠があったわけじゃないのに。





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