夜の牙 下 【完】
第七章 /恋君
「ら、藍っ?悠理くんどうしたの!?鼻血出してるチックだったけど!」
心配そうな声で言う杏樹の手を引いて、私はエレベーターにのった。
「もしかして、藍が殴っちゃったの!?何かあったの!?え、でもさすがに流血となると…」
ころころと表情を変えて、悩んだり、心配そうにしたりする杏樹。
以前よりも、表情が豊かになったように思う。
以前よりも、感情が表に出やすくなったと思う。
それは紅蓮と出会って、そして、以前私と十和のことできちんとわかり合えてからの事で。
それはとても嬉しい事なのだけれど。
内心複雑だった。
いい方へ成長していた杏樹。
だけど、ここに、杏樹が信用しかけていた悠理くんが十和を自殺に追い込んだと言っていいのだろうか。
杏樹はまた傷つくのではないだろうか。
そうやって悩んで、一度ついたはずの決心がぐらりと揺れた。
あらすじ
酷く寂しがりな私の傍に寄りそうのは、牙と優しさを持った人。
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総合ランキング27位獲得!(2012年10月)
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