夜の牙 下 【完】

第八章 /信頼







「俺ね、藍のこと誰よりも愛してるよ」


「…なに、急に」



病院服をばさりと脱いで、私は引かれたカーテンの向こう側にいる豹に首を傾げた。



突拍子もない事を言わないでほしいのだが。



「うーん、ちょっと思ったんだけど。両親の代わりって無いよね。例えばお母さんから貰いたかった愛情を、俺の愛情で補えるとかそういう問題じゃないわけじゃん?」


「……まあ、そうかもね」


「でも、俺は補えなくても、藍が寂しいって感じないくらい愛したいなって思って」


「…」



顔がだんだんと赤くなるのが自分でもわかった。頬が火照る。



普通の服に袖を通して、私は自分の鼓動を落ち着かせる為にふうと息を吐いた。



「俺もそんなに人と関わるの得意じゃないし。藍も鈍感だから」


「っな、ど、鈍感…!」



違う、と否定しようとすれば、カーテンの向こう側で豹がくすりと笑ったのがわかった。



「だから、言葉にするのがいちばん伝わりやすいでしょ?」


「…、」


「ね、俺は藍のこと大好き」


「……いいよ、もう十分伝わってるから」


「藍の愛は俺に伝わってなーい」


「……、」



楽しげな笑い声が零れた。



「嘘だってば。藍が俺のこと大好きなの、知ってるよ」


「……その話は後で!」



恥ずかしさのあまり叫んだ。





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