夜の牙 下 【完】

第八章 /笑顔









海を眺める小夜香さんは、さすがにカーディガン姿ではなかった。



少し短くなった髪が、潮風に揺れている。


相変わらず蒼白の顔は、熱心に海を見つめていた。



「こんにちは。小夜香さん」


「…こんにちは」



隣に腰かけてぎこちなく笑えば、小夜香さんも笑った。



今日、小夜香さんがいるかもしれないと病院のカウンセリングの先生のところへ行けば、ここに来ていると教えてくれたのだ。



「小夜香さん」


「なぁに?」


「小夜香さんは、十和の自殺の理由、知ってたって言いましたよね?」


「………うん」



あっさり肯定した小夜香さんは、表情をほとんど変えなかった。



一瞬だけ、眉を顰めたようにも見えたけれど。





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