夜の牙 下 【完】







まだ冬休み。



後少しで年も変わる。



そんな日の午後の海は、凍てつくように寒かった。


思わず首を竦めて、マフラーに顔を埋める。



それは、いつか豹がくれた黒いマフラーで。


甘い匂いはいつだって私を安心させてくれるし、勇気もくれる。



「知ってたのに、どうして教えてくれないんだって怒らないの?」



苦笑して、小夜香さんは私に視線を向けた。



私は、しばらく唸った後首を横に振る。



「怒りません。私が理由を知った経緯は、正直腹立つものだったし、1人顔面殴っちゃったけど、でも、小夜香さんが言わなかったのなら、それでいいと思うんです」


「…そうなの?」


「はい。でも、小夜香さんは怒らないんですか?」



今度は、私が海へ目を向けた。



「大好きなはずの自分を置いていった、十和に」





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