夜の牙 下 【完】






むしろ、人間生きていて綺麗な事ばかりで人生を終えられるのだろうか。



―――まぁ、私の勝手な考えに過ぎないのだけれど。



小さく溜め息を吐いて、マフラーに顔を埋める。


甘い甘い香りがして、最近では私にもこの匂いが移ってしまったように思える。



そして、マフラーに顔を埋めて、少し辛気臭い表情なだけの女子高生。



そんな私を見て、街を歩く人たちは時々何かを囁き合っている。



自意識過剰ではない、と思う。


決して居心地のいいわけではない好奇の視線は、やはり私に向かっているようだ。



「あの子って…」


「ほら、豹の…」


「彼女なの?」


「普通の子じゃん」


「豹いないね」



そういう悪意も好意も無い言葉が密かに飛び交っている。



視線が自分に集中するのはいい気分じゃない。



けれど、別に心底嫌だとは思わない。



だって、この視線も、あの言葉も、私が豹と一緒にいるという証しだから。





0
  • しおりをはさむ
  • 3151
  • 22891
/ 371ページ
このページを編集する