シュヴーロング【完】

épilogue








「あー、もう、あっちぃー」



もう何度目かの春の訪れ。


温かすぎる春の日差しの中30分も歩き続けている俺は、額に滲む汗を拭って穏やかな太陽を見上げた。

暑すぎなんだよ、お前。まだ春だろうが。


心の中で毒づいてみるが、まさか返事なんて降ってくるはずもなく。



『そんなに暑いの?お土産腐ってないかな?』

「多分大丈夫だと思うけど…」

『多分じゃ駄目なんだよ!だから晶は駄目なんだよっ』



その代わり、耳元に当てたケータイからキンキンとうるさい女の子の声が返ってくる。


俺が2年前に出逢い、半年前に結婚した女の子。

泉希やマイとは程遠い、ガサツでうるさい女の子。



『今日はそっちに泊まるんだよね?』

「あー、うん。そのつもり。明日の正午出発のフェリー乗ってこっち出るから」

『わかった。気をつけてね、晶』



可愛らしい声に、俺は緩む頬で「うん」と返事をした。






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