悪魔様の虜【完結】

悪魔な彼

リーンリーンリーン








「はぁ~。」



久しぶりに3回鳴ったベルの音。
自然と零れ落ちたのはため息。


それでも重たい腰を上げて玄関へ向かう私は、もうかなり毒されていると思う。



カチャンと音を立てて鍵を開けると、すぐに動き出す扉。




冷たい空気とともに入ってきたのは、



「遅い。」



たった三文字。しかも、かなり無愛想な声。





それなのに、苛立ちさえも湧き上がってこないほど。私はこの人のことを知ってしまっている。


会って最初の一言がコレってどうなの?とか。

普通挨拶が先でしょ?とか。


一般常識なんて求めるだけ無駄だと諦めたのはいつのことだっただろうか。



街ですれ違ったら、誰もが必ず振り返る。

それほどに完ぺきに整った顔を歪ませている男もまた、私が謝ることなんてしないとわかっていながら毎度毎度不満の声を漏らすんだから。


懲りないというかなんというか。




モデルも羨むほどの体に纏うものは、言葉にするのが難しい威圧感。

店頭のマネキンにそのまま着せられそうなくらいセンスのいい服を着こなして。

ブランド物のアクセサリーでさえも体の一部かのように悪目立ちすることない。

右耳の変わった形をしたシルバーのピアスは今日も絶好調に輝いている。




「あ~さみぃ。おい、どけ。そんなとこに突っ立ってんじゃねぇ。
相変わらずどんくせぇなぁ。」


そう言ってまるで自分の家かの様に入ってくる男に何も言わずに道を開ける。




言ったって無駄なことくらい嫌というほどわかってるから。



「ボーっとしてんなよ。俺が来たんだから、茶くらい入れろ。」


部屋に向かう足を止め、コートを脱ぎながら肩越しに私を振り返った男が言う。


その言葉に一つため息をこぼし、鍵をかけて部屋へと向かった。



0
  • しおりをはさむ
  • 429
  • 508
/ 526ページ
このページを編集する