悪魔様の虜【完結】

過去の俺

明かりの消えたスマホの画面を無意味に見つめ続ける



たった数分、いや、数十秒だったかもしんねぇけど、心臓が痛いくらいに暴れている



「はぁ、何やってんだよ。俺。あんなこと言うつもりじゃなかったのに・・・。」


暴れまわる心臓とは違う意味で悩ましい頭を抱える

電気もついていないこの無駄に広い部屋でもう何度目か分からないため息をこぼした




それでも、電話に出てくれたことが嬉しくて、柄にもなくニヤけそうになる頬を、誰もいないのに空いた左手で隠してしまう


俺、キモすぎだろ・・



スマホをガラステーブルに置いて夜景の見える窓に近づく



思い出すのは始めて楓を抱いたあの日





電話の声がどんなに冷たくて、震えていて、俺を嫌っていたとしても、


もう二度とあのころのように名前を呼んでくれなかったとしても、


一度触れた甘い果実はもう二度と手放せなかった




離れたくない
離れてほしくない


心も体も





痛いくらいに心では叫んでいるのに声にならないもどかしさが辛い




「誰かの横で笑ってるお前なんか見たくねぇんだよ。」


窓ガラスに映った顔が契約を結んだ日に見たあいつの顔と重なって目を逸らした




そんな自分勝手な気持ちが、あいつの幸せを邪魔していることも、苦しめていることもわかってる



それでも、




「好きなんだよ。





―――――楓。」





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