悪魔様の虜【完結】

変わる今

あの変な電話からもうすぐ10日が経とうとしている


あの後結局散々泣いた私

「はぁ、まだまだ好きなんだなぁ。」


そりゃそうか


相手に気持ちが無いとはいえ、私は彼が好きなわけで

そんな人と肌を重ね合わせ続けた状態で嫌いになれって方が無理だと思う



でももうあれから5年近くが経とうとしている



「そろそろ潮時かなぁ。」

「何が潮時なの?」

「ぅわぁっ!!」


不意に背中から掛けられた声に驚いて、手に持っていた資料をばら撒いてしまった



「わ!ごめん、驚かせるつもりはなかったんだけど・・・。」


困ったように眉尻を下げながら一緒に資料を拾ってくれたのは山田さん

慌てて自分も拾い出す


彼が視界に入ったとともに今の自分の状況を思い出した


時刻は午後4時を回ったところ

今から専務秘書の明蘭さんのところに資料を届けに行くために、エレベーターを待っているところだった


そこで考え込んでついつい零れた独り言を聞いた山田さんが声をかけただけのこと



「すみません。ちょっと考え事をしていたもので・・・。ありがとうございました。」


苦笑いを浮かべながら当たり障りのない話を返すものの、頭の中で考えるのはほかに何か余計なことを言っていなかったかどうか



でも所詮独り言

無意識に出たものがほとんどだから考えてもわかるはずもなく、とりあえず山田さんと一緒にエレベーターに乗り込んだ



「そっか、俺の存在に驚かれたのかと思ったよ。」


さりげなく「開」のボタンを押して私が乗り込むのを待ってくれていた山田さんにもう一度お礼を言ったところで扉が閉まり、



「あの日以来ゆっくり話す時間もなかったもんね。」


そんな彼の言葉に(確かに)と思った
寂しかったとか、気になっていたとかそんなこともなく

本当にただそれだけ


「あ、そうですね。山田さんお忙しそうでしたもんね。」


その言葉通り、こうしてゆっくりと離しをするのは食事をした日以来初めてのことだった


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