悪魔様の虜【完結】

過去の私

悪魔様と私の出会いは今から約20年前の小学校の入学式


桜が咲き誇る、春の暖かい日に私は初めて悪魔様・・・五十嵐唯と出会った




―――――小学校1年生



お母さんに手を引かれ、期待よりも不安の方が大きいまま、飾り付けられた門をくぐり玄関を目指す中



「ちゃんとおともだちできるかな・・・。」

不安な気持ちが言葉となって溢れ出た


誰かに向けて発したわけじゃない
ただの独り言

それでも、


「そんな顔じゃ無理だな。」


隣を歩いていたお父さんははっきりと言い切った



「え!?」


驚きとショックで足を止め、その言葉にうっすらと涙を浮かべたままお父さんの顔を見上げると、私と同じ目線にしゃがみ込んだお父さんはニコリと笑って言葉を続けた



「そんな暗い顔じゃダメってこと。笑顔でいれば大丈夫!笑顔で、元気よく、まず挨拶から始めてごらん。
きっとうまくいくよ。」



その言葉に涙は引っ込み、二人で笑い合った

お母さんが「良かったわね。」と頭を撫でてくれたからますます嬉しくなった



その時、春特有の強い風が吹き思わず目をつむる


「楓、大丈夫か?」

お父さんの声にギュッと閉じた目を開けると、心配そうに私の顔を覗きこむお父さんの顔



その少し後ろに見えたのは、




天使だった



いや、天使のような男の子だった


隣にはお父さんとお母さんらしき人もいて、その子の真っ黒でサラサラな髪についてしまった桜の花びらを取っていた




「どうしたの?お友達?」


お父さんの向こう側を見たまま動きを止めた私を不思議に思ったらしいお母さんが、幼稚園にはいなかったわよね、なんて言う声も私には届かなかった



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