悪魔様の虜【完結】

すでに意識がボーっとし始めている私にこの人は悪魔のように囁く。

いや、本物の悪魔だろう。


人が・・・私が苦しむところを見て、傷つくところを見て心底楽しそうに歪められる瞳。


余程嫌われてるんだなぁ・・・。

こみ上げてくる熱が零れないように、ギュッと唇を噛んだ。



耳を塞いでしまいたいのに。


「俺がお前を抱くのは、」


傷ついていると気付かれたくないプライドが邪魔をする。


「好きだからじゃない。」


弧を描く唇が吐き出すのは、


「ただ単に、」


いつだって、


「都合がいいだけだ。」


私を地獄に落とす言葉。



そんなこと自覚してるし、嫌なら来なければいいのに。

貴方ならどんな女の子だって喜んで受け入れるでしょうに。

都合なんて私の知ったことじゃない。


毎度思うその言葉も、口を出るころには甘い吐息に変えられてしまう。


もう何十回と聞いたその言葉に反論する気も起きなくて。

代わりに胸の痛みを紛らわす方法も知った。




「んふぅ・・や、ッあ!!」


敏感なところを強く刺激されてひときわ大きな声が出る。



その方法は、






この行為に集中すること。





こぼれた涙は傷ついたからじゃない。

息がしづらいのは未だに行為に慣れないから。


無理矢理な理由をつけて“本当の自分”から目を逸らす。



「クククッ、いんら~ん。」


ふざけた口調の男を睨みつけるけど。効果なんてあるわけないし、そんなものを望んでいるわけじゃない。

余裕たっぷりな顔が余計に癇に障る。


「それで睨んでるつもり?誘ってるようにしか見えねぇよ。
残念ながら、今日もお前は俺のモノ。」


「ひゃ!!んっ・・あ、ちがッ・・・・あぁ!」


いつの間にか部屋の電気は消されていた。


男の後ろにある窓のカーテンの隙間から見える月の明かりだけが熱くて冷たい二人を照らす。



真っ黒な髪は月の光で毛先がキラキラしていて。

無駄に似合ってしまうから。ギリッと奥歯をかみしめた。



月がよく似合うこの男に私は今日も遊ばれる。

心も体も限界まで。





それでも私は、




悪魔様に囚われている。



深く深く、どこまでも溺れていく。


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