悪魔様の虜【完結】

悪魔様の虜

ピピピピ



「ん、」


聞きなれたその音に腕を伸ばす


暖房代がかかるから、朝は起きてから暖房をつけるようにしている

だから暖かい布団から出した瞬間、刺すような冷たい空気が私の手を刺激する




・・・はずだった今までの冬の日常は、彼と付き合い始めたその日から変わってしまった




私よりも先にその音源にたどり着いた大きな手がその音を止めると、伸ばしていた私の手を掴み、もう一度布団の中に引きずり込んだ

それと共に強くなる私を抱く腕の力


ギュッと押し付けられた逞しい胸板は再び規則正しく動き出した




さすがにもう十日もたてば、毎朝のこの出来事にも動じなくなったけど最初の頃は私の心臓はフル稼働だった

・・・今も“少しは”落ち着いただけで、それでもバクバクですけどね



そんな中、握られた左手の薬指に光るそれをみて私は1人であの時を思い出して口元が緩んだ



唯君と付き合うことになった日、穏やかなひと時を過ごした私は夜ご飯を食べた後に帰る支度を始めた

そんな私を不思議そうに見る彼は、


「何やってんだ?」


って首を傾げたから、帰るのだと伝えた



すると、その顔には不満げな色が浮かび、次の瞬間には悪魔の微笑みへと変わった

ドキリと私の心臓が音をたてたことなど露ほども知らない彼はそのまま寝室へと消えていった


訳も分からず、支度を終えた状態で唯君を待っていると

戻ってきた彼はその綺麗な唇から甘美な声色で衝撃的なことを告げた



「楓が帰るところはここ以外ないぞ。」


「・・・・・は?」



それから、大家さんに勝手に連絡したことや、私の親への承諾もとったこと

引っ越しの手筈も整えたこと

あとは私が荷物を整理するだけっていう段階まで話を進めたことを説明してくれた唯君



引っ越す先はもちろんここ、唯君の家



「明日は仕事納めだから出社しなきゃならねぇけど、明後日からはもう年末の休みだろ?
今年中には部屋を明け渡すことになったから、明後日荷物の整理に行くぞ。明日の出社に必要だと思われるものは準備してあるから、スーツとか一応見とけ。」


その言葉たちをしばらく理解できなかった私は気づいたらコートを脱がされた状態で、唯君が準備していたものの前に座っていた



ご近所さんへの挨拶とか、大家さんへの挨拶とか、親の事とか、勝手に引っ越しを決めたこととか、いろいろ気になることはあったものの、実は私も離れたくないなぁとか思ってたから彼の行動を受け入れた


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