花くれない【完】

第二章 /夢路







小さい頃、お母様がよく読んで聞かせてくれた絵本があった。



それは真っ白な表紙に銀の文字でタイトルが記されているだけで、とても子ども向けに作られたような絵本ではなかった。






今まで本屋さんで見かけたことはなかったし、あったとしても鮮やかな色調の絵本たちに埋もれて目立つことはなかったと思う。






後から知った話でそもそも発行部数が少なかったらしく、第1刷しか発行していない。



つまりお母様が持っていたのは初版本で、あの本を知っている人は数少ない。










お母様が亡くなってからは読んでいなかったけれど私は今でも覚えている。



その物語を。





読み聞かせが始まる前の温かな静寂と優しい語り口調とともに。
















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