束縛~愛と欲望に溺れた兄~【完】

第3章 選択 /いじめ教室の開校~咲良side~

家を出たのはいいが、何故かまわりからの視線が痛い。

時にはヒソヒソと声も聞こえてきて、くじけそうになった。

なんだか大人までもが私のことを見て、ヒソヒソと話している。

まるで、町全体からいじめを受けているような感じと言えば正しく表現できるだろうか。

「あの子よ…」
「あぁ、この前万引きした…」
「うちの子が見たって言ってたわ~」

とんだ嘘っぱちだ。

この1日で一体何があったって言うの?

嘘の情報が町全体に広まっていく…。
私、万引きなんてしてないのに。

なんで?どうして?

私には全く理解できなかった。

だけど、学校に行くにはそこを通らないと行けなくて、私は俯いて学校まで走った。

走って走って…、息をするのも苦しい。

ひゅーひゅーと音を鳴らしながら、私は呼吸を整えた。

顔を上げればすぐ目の前に学校の門が見えた。

まるで、幼い頃見た絵本の地獄への入り口のようだった。

昨日見た門と変わらないはずなのに、何故かそう見えてしまう。

私はごくりと喉を鳴らし、学校へと足を進めた。

学校へ入るだけだと言うのに、登校中の生徒からの視線を浴びた。

そこでも、町と同じ冷たい視線とヒソヒソとした話し声が聞こえた。

私は俯いて進むことしかできなかった。

「なんでなの…」

私の心の声が漏れた。

それから、靴を上靴に履き替え階段を上る。

ゆっくりとした足取り…ではなく、少しはや歩きで教室に向かった。

教室の前までくれば、気味が悪い程静まりかえっていた。

その空間が、いじめの始まりを物語っていた。

震える手で、教室の扉を開けた。

怖い…。開けたくない。もう嫌だ。

開く音がますます不安を掻き立てた。

…あれ?
何も…ない?

誰も私を見てはいなかった。

ホッとて、き教室の中に足を踏み入れた時だった。

「せーのっ」

ビチャッ…

掛け声とともに水のようなものが私の身体にあたった。

「冷たっ…」

それでも、ビチャビチャと音をたてて私の身体にあたる。

「も…やめ、て」

私の声は届かない。

制服が濡れていく。

「ははっ。こいつ露出趣味なんじゃない?」
「うわっ…さいてー」

えっ…?

濡れた制服に視線を落とした。
嘘だと思いたかった。

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