風花 〜彼方への約束〜

第二章 /妻恋草 〜モミジ〜

この時代に来て、5日。


俺は、なぜか今、京都に向かう山道の途中にいる。


俺と宮達は、そのまま楠木家で数日世話になっていた。


その間に、

一度、この目で京の都を見た方が良い


という宮の一言で京に行くことになった。



棟梁である正季は分かるが、なんで俺まで着いて行く羽目に、、、。


赤坂に一人残っても、やることも無いからいいけどさ。



そんな事を思いながら、ひたすら歩く。


この時代の交通手段は、主に徒歩だ。


船を使って淀川を上る方法もあるらしいが、人目につくのを避けたいこともあって、徒歩で向かうことになった。



普段、定期的に運動もしてるから、体力にはそこそこ自信はある。


それでも、真夏のうだるような暑さと、慣れない草履、舗装されてない山道に、身体が悲鳴をあげ始める。


まだ、山の中で日陰があることが唯一の救いだ。



「なんだよ〜、もうバテてんの?」


正季が、ニヤニヤしながら俺に絡んでくる。


「うっせーな。そんなことねーよ。」


正季を睨みつけるけど、上がる息のせいで格好がつかない。


くそっ!


この時代に来てから、情けないことばっかりだ。


自分が、日々どれだけ〝文明の利器″に頼って生きてきたかが明白になる。


「しばし、休憩するか。」


宮がそう言って、適当な開けているところに腰を下ろす。


俺は竹筒に口をつけて、中の水を一気に飲もうとする。


すると、宮の手が伸びてきて、それを遮る。


「風正。 あまり一度に水を飲まぬ方が良いぞ。

腹が冷える。 それにこの先、水の調達をできるところがしばらく無い。」


「分かった。」


そう言って、俺は少しずつ水を口に含む。


数キロ毎にコンビニがあって、水どころかなんでも手に入って、トイレもある。


現代とはえらい違いだ。



「もうすぐ、京の都が見えてくるぞ。しばしの辛抱だ。」


そう言って、宮は笑った。


俺も、笑ってそれに応える。



周りへの気遣いと、頼れる安心感。


こいつみたいな奴が政治をしたら、きっと、良い世の中が待ってる気がする。


俺より年下なんだろうけどな。


しっかりしてる。


俺だって、それなりに歳を重ねて、責任ある立場でやってきたはずなのに。


ここに来たら、初めてのことばかりで、正直、一番の役立たずだ。

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