風花 〜彼方への約束〜

第三章 /空転の邂逅 〜カイコウ〜

鎌倉を出発した私達は、箱根を越えて東海道を行く。

見据える先には富士山。

駿河の国に入っていた。現代で言うと静岡県辺りだろうか。


視界を遮るもののないこの時代では、富士山もなんだか大きく見える。

やっぱり、ここは日本なんだなぁ。


「桃李、大丈夫?」

高氏が馬上から心配そうに私を振り返る。


「うん。大丈夫よ。」

笑顔でそう返事をするけど、本当はちょっと疲れが出てきていた。

まだ、鎌倉を出発してから数日しか経っていないのに。

体の負担を考えて、甲冑は既に脱いでる。

それでも、馬での長時間の移動と、見知らぬ人に囲まれての生活に神経を使って、疲労が溜まる一方だった。


足利家が率いている兵の数はこの時点で約1万。これからまだまだ増えて行く予定だ。

こんなところで根を上げるわけにはいかない。


「三河でゆっくり休めるから、それまでもう少し頑張って。」

「分かったわ。ありがとう。」

ついて行くって自分で決めたのに、最初からこんなに気を使わせちゃってる。

しっかりしなくちゃ!


私は、気を引き締め直して、馬の手綱を握る。

乗馬やっといて、本当に良かった。


これで、馬にすら乗れなかったら足手纏いもいいところだった。

まあ、大半の兵は歩きだから進む速度はゆっくりなんだけど。

馬に乗ってるだけとはいえ、秋も終盤になり、寒さが身に染みる。

歩くほうが寒さは感じないかもしれないけど、かなり体力を消耗するはずだ。


歩いてる人達はもっと大変なんだもの、馬に座りすぎてお尻が痛いとか言ってられないわ。



鎌倉から京へ差し向けられた援軍は、大きく二手に分かれている。


北条一門の大仏貞直を大将軍とした、一族を中心とする大軍は、私達よりも先に鎌倉を立っていて、既に京に着いていると連絡が来た。

その数、約8万。


そもそも、笠置山で兵を挙げた後醍醐天皇の兵の数は3千。
対する六波羅の兵は7万5千だったという。


それでも、幕府側は持ちこたえられずに大きな痛手を負った。


20分の一にも満たない兵力に太刀打ちできない。

それは、幕府の力が弱まってることを証明してるのと同じだ。

その援軍に、およそ10万にものぼる兵を幕府は派遣した。


そうまでしなくては食い止められないほど、時代という川の流れは強くなっている。



更に、11日には楠木正成が河内で兵を挙げたらしい。


楠木正成。


現代で聞いたことがある。

この時代の人だったのね。


あれ?

確か、鎌倉幕府を滅ぼした人達の中の一人だったような気もする。


ちゃんと勉強しておくんだったわ。


ということは、そう遠くないうちに味方になるってことかしら、、、。


たった500の兵で、数万の大軍に立ち向かおうとしている人。

それは、どんな人なんだろう。

なんとなく興味が湧く。


この先、会ったりすることなんてあるのかしら?


そんな事を考えながら、今はただひたすら西を目指す。


次に染まる色を決めるために______。

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