風花 〜彼方への約束〜

第一章 /撫子 〜ナデシコ〜


・・・・・


セミが狂ったように鳴いている。



しかも、俺の耳元で。



五月蝿い。こっちは、気持ち良く寝てるのに。



桃李が、窓開けっ放しにしてんのかな。



そもそも、俺らの住んでるここは、8階建の5階だ。


窓を開けても、去年はこんなにセミの声なんて聞いた覚えがない。



そんなこと、どうでも良いけど、





とにかく。。。





「。。。っ! うるせー!!」





俺は、叫びながらバッと身体を起こす。



俯いたまま、開いた目に最初に飛び込んできたのは、萌えるような緑色。



一瞬で、寝ぼけてた頭が思考し始める。




なんだ、これ?



なんで、俺、こんな所にいるんだ。。。?




足を投げ出して座った自分を上から下まで確認する。



制服を着ている。



左手には、外したサングラス。



足元は仕事のとき用の革靴。




その先に、視線を移すと、舗装もされてない細い道。


一段低くなったその先は、田畑が広がる。



夏の日を浴びて、青々と茂った葉が風に揺れていた。



遠くに、農作業をする人影が見える。



もっと遠くには、小さな小屋らしき物もちらほら。




視線を戻して、自分の周辺を見渡す。



道の横には草が生え、すぐ側には林が迫っている。



その林から、一本だけ外れて立ってる木の根元に、自分は座っていた。



太陽が真上にあるけど、木の葉が日陰を作ってくれているおかげで、直射日光からは免れてる。




「なんだよ、これ。。。!?」



口に出して呟くと、それまで固まっていた聴覚が働きだす。



耳を塞ぎたくなるような、セミの声。



投げ出してた足を引っ張ってきて、片膝を立てる。



その上に肘を置いて、俯く自分の頭を支えた。



「くそっ、、、!!」



なんだよ、これ。なんだよ! なんなんだよ!!



硬く目を瞑る。



考えようとするけど、セミの声が耳について、頭が上手く働かない。



俺は、どこにいて、何をしてたんだっけーーー?

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