Re:turn match!-1-






「吏斗ーっ!」


 ホームルームが終わり、一時間目の授業が始まるまで時間が空く。それぞれ教科書を用意したり、本を読んだり、友達と雑談したりと様々に過ごす中、明らかに関わりたくない集団が教室に入ってきた。

 金髪に赤髪に茶っぽい金髪にピンク。もう髪色がうるさい。そんでもって、奴らの顔には見覚えがある。ありすぎる。

 ひしひしと嫌な予感がして、顔を隠すように俯く。幸い鎖骨に届くくらいの髪の長さで、耳の横から落ちてきたそれがカーテンのように隠してくれた。震える手を膝の上で握りしめ、息をひそめて唇を噛んだ。そっと目を閉じ、気づかれませんようにと祈る。

 私は空気。私は空気。私は空気。

 心の中で自分に言い聞かせていると、ばたばたとうるさい足音が近づいてくる。それと同じくらいうるさい心臓の音。ぎゅっと、爪が掌に食い込むくらい強く、握りしめた手にさらに力を込めた。

 祈りが届いたのか、近づいてきた気配は私ではなく、隣の席を囲んだ。

 よかった! 気づかれなかった! 小さく息を吐いた瞬間、「あれ?」と茶金の短髪の男が声を上げた。一瞬、心臓が止まる。慌てて、もう一度息を詰めた。


「吏斗の隣って、席あったっけ?」


 あっ、私、終わったかも……。


「ああ、転校してきたの」

「へー、珍しい」

「えーっ! いいなぁ、あたしも吏斗の隣がいいー!」


 確かに高校で転校生って珍しいよね! 興味湧いちゃうよね! ああ、こんなことなら二時間半かかってもいいから転校してくるんじゃなかった!!!!

 でも、まだ転校生が“那月わたし”だって気づいてないらしい。お願いだから、後生だから、そのまま気づかないで! 別の話題に移って! それかチャイムなってくれ!

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