溜め息 第一部【完】

第四章 /溜め息十一







純白なシーツに広がる、艶やかな黒髪。




「憂李…。」

「んっ…。」




無言で僕の首へと細い腕を回す彼女が愛おしくて、欲望のままに口付けを重ねる。


熱を孕む相手の口腔内は、夕食のデザートで付いてきたザッハトルテよりも甘くて、すぐに僕の舌は蕩けてしまう。




嗚呼、こんなの、僕らしくないや。



何かに急かされるように彼女のシャツの釦に手を掛けた。



何度も、こういう行為をしてきたはずなのに。

幾度となく、色欲を吐き出す為だけの情事はこなしてきたはずなのに。



今までのどれとも違う、この感覚。


心臓が潰れてしまうんじゃないかってくらいに、緊張で鼓動が跳ねていた。






「んっ……郁…。」



衣類が擦れる音を立てて、素肌から剥がれる。

ベッドサイドへと散らされた制服に皺が寄る事なんて気にする余裕すら欠くなんて、全く僕が僕でないみたいだ。



止まらない。

止められない。




接吻をいっそう深めた途端に、糖度の高い声で僕の名を呼ぶ憂李はやはり狡い。




分かってないよね、本当に。

それだけで、欲望の灯が容易に大きくなるっていうのに。




易しくしてあげたい。そう思うのに。

己を一刻も早く突き立てたい。そんな恐ろしい欲に呑み込まれそうになる。




これまでの場数や経験なんて、本命を前にしただけで何の役にも立ちそうにはなかった。





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