溜め息 第一部【完】

第五章 /溜め息十三










冬休みの短さをこれ程までに憎く思ったのは初めてかもしれない。



あと二日で新しい年を迎えるこの世の中は、忙しなく動いている。




クリスマスツリーやらイルミネーションやらで彩られた街並みも、いつの間にか年末の慌ただしさに溢れていて、新年を迎える為の門松や鏡餅が店頭には並んでいた。



そんな時でも、夜の繁華街だけはいつもと変わらない。



夜の23時を過ぎているけれど、この辺の賑わいは静まる事を知らず、寧ろこれから更に喧騒が増える事だろう。



『ビリヤードするから付き合え』



親友からの愛想のないメッセージさえ受信しなければ、僕は今頃家に引きこもってこたつで蜜柑でも食べていたと思う。


それか、憂李と会っていたかのどちらかだ。





実は昨日も彼女とデートをした。ただゆったりと喫茶店でお茶をしながら話をするだけなのに、憂李といると幸福感と充実感で身体が満たされるから恋っていうのは全く不思議な物だ。


色々と憂李から話を聞いて分かった事なのだけれど、どうやら彼女は幼くして交通事故で両親を失ったらしい。


その時に彼女を引き取ったのが、彼女の母親の兄であり柳生組の組長をしている叔父だったのだと言っていた。


だから憂李と柳生海十はそれこそ本当の兄妹のように育ったようで、彼女の常識は全てあの男によって教え込まれた物だという事実が発覚した。





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