溜め息

第五章 /溜め息十四









そっか。


あの男が、雪峰純連なんだ。




ここへ向かう道中にこの男に対して好奇心を抱いていた自分が、今は愚かに感じる。



こんな人間の顔を見てみたいだなんて。少しでも思ってしまった事に後悔は募る。





「すーみれ。」




誰もが開口できない空気を容易に割いたのは、この状況には全く相応しくない間延びした声だった。



店内の照明がほとんどない奥。


その闇から姿を現した男を見て、僕はまた息を殺す。




「何。どうしたのなつめ。」



最早ただの死体に成り果てた惨い男の身体を、足で蹴って転がした雪峰が視線をその男へと向けた。



「もう15人目だよ?まだやるの?」




クスクスと笑い声を漏らした男は、入り口の屍を一瞥して首を傾げた。


雪峰純連よりは劣るけれど、この男も異常に美しい容姿をしている。


けれど、それに対して僕は息を殺したんじゃない。





華奢なはずのその男が両手で、血塗れの人間を引き摺って現れた光景に頭を大きく揺さぶられたような衝撃を受けたのだ。




「何なの、あれ……。」




15人。それは一体何を指す数字なのだろう。


知りたい気もするし、知るのが酷く怖いとも思う。





「えー殺しちゃ駄目なの?」

「駄目だよ、だって一応こいつ等は極道の人間じゃないもの。」

「殺さないと快感が味わえないよ。」




平然と。


まるで、他愛のない会話を交わすかのように話す二人に、背筋が凍り付く。





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