溜め息

第六章 /溜め息十七










聴き間違い…なんかじゃないよね。



予想だにしなかった意外過ぎる言葉に動揺する。





「何馬鹿みてぇな顔してんだ。」

「なっ…。」





クスクスと笑う相手に、僕の顔が今日一番に火照る。



そりゃあ馬鹿みたいな顔にもなるに決まっている。

柳生が僕を余り良く思っていないと決め込んでいたし、ここに引っ張り出されたのだって、あの夜に店内にいておきながら憂李に手を伸ばす事すらできなかった臆病な僕を咎める為だとばかりに思っていた。






「だって、僕に頼られてもメリットなんて何もないでしょ。」

「いや、メリットならある。」

「……。」

「憂李に向けてのポイント稼ぎだ。」

「最低!!!!」





頬に空気を溜めて剥れた僕をインディゴ越しの瞳に映して、酷く愉快そうに口許を緩める相手。


それにシンクロするように、西門も隣でケテケテ笑っている。





「冗談だ。」

「信じられない。」

「単純にお前に賭けてみてぇと思ったってのが、本当の理由だ。」

「僕に賭ける?」




自然と首が横に倒れる。

何を賭けるつもりでいるのだろうか。



話の肝であるはずの回答は得られないまま、柳生は「ああ」と頷いた。





「俺は郁が気に入った。」

「はい?」

「それ以外に何の理由もいらねぇだろ。」




残りのパフェを休まずに口へ運びながら、頬に靨を作った柳生はどう見ても僕を気に入っているようには感じられない。





0
  • しおりをはさむ
  • 266
  • 3881
/ 216ページ
このページを編集する