溜め息 第一部【完】

第七章 /溜め息二十









それからの記憶は、本当に断片的にしか残っていない。




「あっ…あっ……郁待って…やだ……。」

「ごめんね憂李、そのお願いは聞けそうにないや。」





彼女の香りが充満する寝室は、情欲の支配下にいる僕にとっては媚薬のような物だった。


激しい律動の最中、彼女の身体が痙攣する。

息も耐え耐えで、指で必死にシーツを手繰り寄せて絶頂を乗り越えようとしている様は、酷く色気に満ちていて、煽情的でしかない。





「…痛っ……んっ…んっ……郁の痕…付けたの?」





休む間もなく腰を打ち付ける僕の背中へ、必死に腕を回して密着する彼女。


その首筋には早数十個目となる印が刻まれていた。



僕の欲望と嫉妬の数に比例するかのように浮いている鬱血痕を、両者のが混ざり切った唾液を纏った舌先で愛撫する。






「憂李を愛しすぎて、可笑しくなりそう。」





愛してる。


もういっその事、この空間に君を縛り付けて、何処にも行けないように。誰の目にも触れないように。宝物みたいに閉じ込めてしまいたい。



汗の浮いた素肌が触れ合う感覚は、とても愛おしくて、幸せだ。





このまま時間なんて止まってしまえば良い。

愛しい君の身体を抱いたまま、死んでしまいたい。




そんな歪な思考と感情が、どんどんどんどん止めどなく溢れていく。





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