溜め息 第一部【完】





「郁、クリスマス何するの?」

「別に。」

「予定ないなら一緒に過ごさない?良いホテル、取ってあげる。」

「遠慮しとく。」

「えー?じゃあ気が変わったらいつでも言ってね。私は郁と過ごしたいから。」

「はいはい。」



裸のまま、ベッドから手を伸ばして僕の裾を掴む女に愛想笑いを浮かべる。




ああ、そうかもうすぐクリスマスなのか。


どおりで窓の外に映る木の枝が剥き出しになっているわけだ。



ああ、そうか憂李に出会ってからもう一つの季節が過ぎ去ったのか。



時は確かに経っているというのに、僕の心は何も変わらない。

艶やかな黒髪に想いを馳せ、途方も無い虚無感に心を震わせている。




あれから、進展はないままだ。



「行っちゃうの?」

「うん、またね。」



二度と身体を合わせる事はないであろう相手にひらひらと手を振る。

一足先に保健室を出て、習慣づいたように僕の足は屋上へと向かう。




無意識のうちに、儚い背中を探している。

彼女だけを…成瀬憂李だけを。

ずっと、ずっと探している。



ただ会いたい。彼女の顔を見たい。抱き締めたい。





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