溜め息

第四章 /溜め息九







一瞬、呼吸をするのを忘れていた。



気怠そうにバイクに凭れ、制服姿で当然のように煙草を咥える男。


彫られたような顔は、近くで見ると余計に綺麗だ。


独特な雰囲気を纏っているその男を見るのは三度目だが、良い印象など持っていなかった。




「馬鹿な男だ。」




僕を見て、片方の口角を吊り上げる男は一体何の為にここに来たのだろうか。


圧倒的な雰囲気に呑み込まれそうになる。


言葉でうまく表現できないが、敢えて言うなら威圧的なそれに身体が硬直する。




「あいつは毒だらけだ。」



“あいつ”そう呼ばれた人間が誰なのかくらい、流石に分かる。



僕とこの男の共通の知り合い。



そんなの、成瀬憂李以外いないのだから。




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